大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和28(あ)3984 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人大下定之進の上告趣意について。

論旨は、第一審裁判所が裁判所外で証人を尋問する場合、被告人が勾留中であれ

ば、その証人尋問に立ち会うか否かの意思を明示させるべきであつて、原審の判示

するように、公判期日において証人尋問並びにその日時場所を決定して尋問事項を

通知した以上、さらに進んで証人尋問に立ち会うか否かを問うを要しないと解する

ことは、憲法三七条二項の解釈を誤つたものであると主張する。

しかしながら、記録によれば、第一審裁判所は公判期日において証人A外一名を

裁判所外で尋問することを決定し、尋問事項書を被告人並びに弁護人に送達し、証

人尋問の際には被告人は立会つていないが、弁護人はこれに立会い右証人両名に対

し尋問した上、その後の公判期日においては右証人尋問調書について適法な証拠調

が行われ、その際被告人及び弁護人からは何らの異議もなかつたことが認められる

のであり、右と全く同様な事案につき当裁判所大法廷判決は、「裁判所が証人を裁

判所外で尋問する場合に被告人が監獄に拘禁されているときのごときは、特別の事

情なきかぎり、被告人弁護の任にある弁護人に尋問の日時場所等を通知して立会の

機会を与え、被告人の証人審問権を実質的に害しない措置を講ずるにおいては、必

ずしも常に被告人自身を証人尋問に立ち会わせなくても憲法三七条二項の規定に違

反するものではないと解すべきである。」と判示しているのであるから(昭和二四

年(れ)一八七三号同二五年三月一五日大法廷判決)、本件の場合も右大法廷判決

の趣旨に徴し所論憲法の規定に違反しないものと認めることができる。そして前記

大法廷判決は、なおこれを変更するの要がないので、所論は採用することができな

- 1 -

い。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す

る。

昭和三〇年六月二一日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!